
「先に被せ物」はNG?補綴前に歯周基本治療を行うべき理由と治療の流れ
2026年01月31日 07:58
歯周病があると言われたけれど、「先に被せ物を入れてしまえば早く終わるのでは?」「仮歯の期間が長いと歯ぐきが腫れそうで不安…」と感じる方は少なくありません。実は、補綴(被せ物・ブリッジなど)を長持ちさせるには、入れる“順番”がとても大切です。歯ぐきに炎症が残ったまま補綴を進めると、境目に汚れがたまりやすくなったり、歯ぐきが落ち着いた後に適合が変わって作り直しが必要になったりすることもあります。
そこで重要になるのが、補綴前の「歯周基本治療」です。歯周病の原因(プラーク・歯石)を減らし、歯ぐきの腫れや出血を落ち着かせて、補綴の土台を整えるためのステップです。本記事では、補綴前に歯周基本治療を行う理由、治療の流れと内容、再評価(治ったかどうかの判定)の目安、そして不安が出やすい“仮歯の期間”の注意点まで、できるだけ分かりやすく解説します。
歯周基本治療を補綴前に行う理由(被せ物を長持ちさせる土台づくり)
「被せ物を早く入れたい」のに、なぜ先に歯周治療なのか。ここが一番の疑問ポイントだと思います。結論から言うと、補綴は“仕上げ”であり、歯ぐきが安定していない状態で仕上げに入ると、適合・清掃性・見た目のいずれもが崩れやすいからです。
歯周病は、歯と歯ぐきの境目に細菌が停滞して炎症が続く病気です。炎症があると歯ぐきは腫れ、出血しやすくなり、歯ぐきの形も日々変わりやすくなります。そんな状態で型取りをすると、出来上がった補綴物の境目(マージン)や形態が“炎症のある歯ぐき基準”になりがちです。その結果、治療後に歯ぐきが引き締まったときに段差が生じたり、清掃しにくい形の補綴になってしまったりします。
だからこそ、補綴前に歯周基本治療を行い、炎症を落ち着かせ、歯ぐきの形を安定させてから補綴へ進むことが、長期的なやり直しを減らす近道になります。ここからは、理由をもう少し具体的に整理していきます。
炎症が残ると「適合・清掃性」が崩れやすい
歯ぐきに腫れや出血がある状態では、補綴治療で重要な「型取り」「マージン設定」「形態の微調整」が不安定になりやすくなります。たとえば、歯ぐきが腫れていると、型取りの際に歯ぐきが押されて一時的に形が変わり、出来上がった被せ物が実際の歯ぐきの形に合いにくくなることがあります。
また、炎症がある歯ぐきは出血しやすいため、防湿(唾液や血液を遮断して精度を上げること)が難しくなり、接着や仕上げの精度にも影響が出ることがあります。結果として境目にわずかな段差ができ、そこにプラークが停滞しやすくなると、被せ物の周りの歯肉炎が慢性化しやすくなります。
つまり、炎症が残っていると「補綴物が合いにくい」だけでなく、「汚れがたまりやすい形になりやすい」という二重の不利が起きます。補綴が入った直後は良さそうに見えても、数か月〜数年単位で歯ぐきが繰り返し腫れ、結果的に再治療につながる…という流れは珍しくありません。
歯周組織が安定すると補綴の境目が合わせやすい
歯周基本治療で炎症が落ち着くと、歯ぐきは引き締まり、出血しにくくなります。すると、補綴の境目(マージン)を適切な位置に設定しやすくなり、コンタクト(隣の歯との接触)や咬み合わせの微調整も行いやすくなります。
特に「境目が合う」というのは、単にピッタリ見えるという話ではありません。段差が少ない=プラークが溜まりにくいということです。たとえば、歯間ブラシやフロスが通りやすい形、磨き残しが出にくい輪郭、清掃しやすい歯ぐきの高さを意識できると、補綴後の歯周病再発リスクを下げやすくなります。
仕上がり(見た目の自然さ)と予後(長持ち)を両立させるには、歯ぐきが安定したタイミングで補綴を完成させることがとても重要です。
例外として「早期補綴」を検討するケースもある
基本は「歯周基本治療→再評価→補綴」ですが、例外的に“早期に噛める環境”を作ったほうが歯周治療の効果が上がる場合もあります。たとえば、咬合性外傷(噛む力の偏りや強すぎる力)が強く関与しているケースでは、歯周治療だけでは炎症が引きにくいことがあります。
このような場合、最終補綴を急いで入れるというよりも、暫間補綴(テンポラリー)や暫間固定、咬合調整などを併用して、歯にかかる負担を軽くしながら歯周基本治療を進める考え方がとられます。ポイントは「早期補綴=歯周治療を省く」ではなく、あくまで歯周基本治療が前提で、治療効果を高めるために一時的な補助を入れる、という位置づけです。
次は、補綴前に実際に行う「歯周基本治療の内容」を、検査から順番にやさしく整理します。
歯周基本治療とは(補綴前に行う内容をやさしく整理)
歯周基本治療は、歯周病の“原因そのもの”にアプローチして炎症を落ち着かせる治療です。補綴前にこれを行う意味はシンプルで、被せ物やブリッジを入れても再発しにくい口の環境を先に整えるためです。
歯周病は「歯ぐきが弱いから」ではなく、主にプラーク(細菌のかたまり)と歯石が停滞することで炎症が続き、歯周ポケットが深くなる病気です。補綴の精度をいくら上げても、境目に汚れが溜まる環境が残っていれば、歯ぐきはまた腫れやすくなります。だからこそ、補綴前は“土台づくり”として、検査→セルフケア支援→歯石除去→必要なら深い部分の治療、という流れで進めます。
ここからは、補綴前目線で「具体的に何をするのか」を順に見ていきましょう。
検査から始まる(歯周ポケット・出血・レントゲン)
歯周基本治療は、いきなり歯石を取るだけではありません。まずは検査で現状を把握し、「どこを優先して治すべきか」を決めます。具体的には次のような項目を確認します。
歯周ポケット(PPD):どの部位が深いか、全体の傾向はどうか
出血(BOP):炎症が残っているサイン。磨き残しが多い部位の目安にもなる
レントゲン:骨吸収の程度、歯根の形、見えない歯石の可能性
動揺度:噛む力で揺れていないか(補綴前の負担評価に直結)
根分岐部(奥歯の根の分かれ目):清掃が難しく、改善に時間がかかりやすいポイント
補綴前に重要なのは、「見た目の歯ぐき」だけで判断しないことです。歯ぐきが一見落ち着いていても、ポケットが深く出血が続いていると、補綴後に腫れがぶり返しやすくなります。検査結果をもとに、治療の優先順位とゴール(再評価の基準)を共有することが、遠回りを減らすコツです。
歯周基本治療の中心は「プラークコントロール」
歯周治療の土台は、実は医院での処置よりも**日々のセルフケア(プラークコントロール)**です。どれだけ丁寧に歯石を取っても、毎日の磨き残しが多いままだと炎症は戻りやすく、補綴の境目にもプラークがたまりやすくなります。
ここで大切なのは「頑張って磨く」よりも、自分の磨き残しパターンを知って、道具を合わせることです。たとえば、
奥歯の外側に磨き残しが出やすい → ヘッドが小さい歯ブラシへ変更
歯と歯の間が腫れやすい → フロスや歯間ブラシのサイズ調整
被せ物予定の歯の周りが炎症を起こしやすい → 当て方(角度)を重点的に練習
補綴前は特に、将来被せ物が入ったときに**「その形でも磨けるか」**を見据えた練習が効果的です。補綴が入ってから急に道具を変えるより、先に磨き方が安定しているほうが、歯ぐきのコンディションがブレにくくなります。
スケーリング・SRPで歯石と細菌の温床を除去する
プラークコントロールと並んで重要なのが、歯石や細菌の温床を取り除く処置です。歯石は表面がザラついていてプラークが付着しやすく、セルフケアだけでは取り切れません。
スケーリング:主に歯肉縁上(歯ぐきより上)の歯石除去
SRP(スケーリング・ルートプレーニング):必要に応じて歯肉縁下(歯ぐきの中)の歯石除去と、汚染された根面をなめらかに整える処置
補綴前に意識したいのは、単に「歯石を取る」だけでなく、歯ぐきが引き締まって清掃しやすい環境を作ることです。歯肉縁下に歯石が残っていると出血が続き、型取りやマージン設定が安定しにくくなります。逆に、炎症が落ち着いて出血が減れば、補綴の精度も上がり、結果として再発予防にもつながります。
TBI→縁上スケーリング→SRPの“順番”が大切
補綴前の歯周基本治療は、順番にも意味があります。いきなり深い部分(歯肉縁下)だけを触るより、先に環境を整えたほうが改善が出やすいケースが多いからです。
TBI(ブラッシング指導)で磨き残しを減らす
縁上スケーリングで目に見える歯石を除去し、炎症の“火種”を減らす
必要な部位に SRP を行い、深い部分の細菌停滞を減らす
たとえば、プラークが多いままSRPをしても、すぐに細菌が再付着して改善が鈍く感じることがあります。逆に、セルフケアが整ってから処置に入ると、腫れや出血が引きやすく、「口の中がスッキリした」「歯ぐきが締まった気がする」と実感が出やすくなります。
次は、歯周基本治療の後に必ず行う「再評価」と、**補綴へ進める“移行の目安”**を具体的に解説します。ここが見えると、「結局いつ被せ物に行けるの?」という不安がかなり整理できます。
補綴へ進む前に行う「再評価」と移行の目安(歯周基本治療 補綴前の判断基準)
歯周基本治療は「やったら終わり」ではなく、効果が出ているかを“再評価(再検査)”で確認してから次へ進むのが基本です。初診時と同じように歯周ポケット(PPD)や出血(BOP)、動揺などを測り、数値の変化から改善度を判定します。再評価のタイミングは、処置直後ではなく歯ぐきが落ち着いてから行うのが一般的で、たとえばSRP後は炎症の程度に応じて4〜6週を目安に再評価する考え方が示されています。
補綴を急ぎたい気持ちがあっても、ここを飛ばしてしまうと「本当は炎症が残っていた」「仮歯・最終補綴に移った途端に腫れた」というブレが起きやすくなります。逆に言えば、“いつOKと言えるか”を基準で見える化できると、治療の順番に納得しやすくなります。
治癒の目安は「ポケット3mm以下・出血なし」
補綴へ移行するうえで大切なのは、見た目の赤みだけではなく、炎症がコントロールできていることです。臨床的には「歯周ポケットが浅く、プロービングで出血しない(BOPが陰性)」が、分かりやすい目標になります。
目安として、PPDが3mm程度まで落ち着き、BOPがほぼ出ない状態を目標にする医院は多いです。一方でガイドラインでは、再評価の判定として「ポケットが4mm未満に回復したが一部に炎症が残る場合は継続管理が重要」といった整理や、「4mm以上のポケットが一部残っても炎症がなければ“病状安定”としてSPTへ」といった考え方も示されています。つまり、理想は高く(浅く・出血なし)置きつつ、患者さんのリスクや残存所見に応じて**“補綴に進める現実的なゴール”を設定する**のがポイントです。
再評価で残る所見は、再SRPや歯周外科の検討材料
再評価で「深いポケットが残る」「出血が続く」場合は、単に“治りが悪い”ではなく、原因が取り切れていない・治りにくい条件があるサインかもしれません。たとえば、
歯肉縁下に歯石やバイオフィルムが残りやすい部位(奥歯の裏側など)
垂直性骨欠損(骨の減り方が局所的で深い)
根分岐部病変(奥歯の根の分かれ目)
強い咬合負担(噛む力の偏り、食いしばり等)
このような所見が残る場合、再SRP(もう一段丁寧に原因除去)を行うのか、部位によっては歯周外科を検討するのか、あるいは外科が難しい条件なら**管理強化(短い間隔での再評価+SPT)**で安定化を狙うのか、次の一手が変わります。再評価は「補綴に進むための関門」ではなく、最終補綴を長持ちさせるための作戦会議だと捉えると分かりやすいです。
補綴中も状態変化がないか確認する視点
補綴・修復(機能回復)が長期化する場合、開始時点で歯周が落ち着いていても、途中で清掃性が落ちたり、仮歯の形や咬み合わせの影響で歯ぐきが荒れたりすることがあります。だからこそ、補綴の工程中も「今の歯ぐきは安定しているか」をときどき確認し、必要なら仮歯の形態修正・清掃指導のやり直し・咬合調整を挟むのが安全です。
言い換えると、補綴は“作って終わり”ではなく、歯周状態の変化に合わせて微調整しながら完成度を上げる治療です。再評価で得た基準(PPD・BOP・動揺など)を、補綴期間中のチェックにも活用できると、最終補綴の安定につながります。
次は、患者さんが特に不安になりやすい「仮歯(テンポラリー)」「マージン」「かみ合わせ」を、補綴前にどう整えるべきかを具体的に整理します。
補綴へ進む前に行う「再評価」と移行の目安(歯周基本治療 補綴前の判断基準)
歯周基本治療は「やったら終わり」ではなく、効果が出ているかを“再評価(再検査)”で確認してから次へ進むのが基本です。初診時と同じように歯周ポケット(PPD)や出血(BOP)、動揺などを測り、数値の変化から改善度を判定します。再評価のタイミングは、処置直後ではなく歯ぐきが落ち着いてから行うのが一般的で、たとえばSRP後は炎症の程度に応じて4〜6週を目安に再評価する考え方が示されています。
補綴を急ぎたい気持ちがあっても、ここを飛ばしてしまうと「本当は炎症が残っていた」「仮歯・最終補綴に移った途端に腫れた」というブレが起きやすくなります。逆に言えば、“いつOKと言えるか”を基準で見える化できると、治療の順番に納得しやすくなります。
治癒の目安は「ポケット3mm以下・出血なし」
補綴へ移行するうえで大切なのは、見た目の赤みだけではなく、炎症がコントロールできていることです。臨床的には「歯周ポケットが浅く、プロービングで出血しない(BOPが陰性)」が、分かりやすい目標になります。
目安として、PPDが3mm程度まで落ち着き、BOPがほぼ出ない状態を目標にする医院は多いです。一方でガイドラインでは、再評価の判定として「ポケットが4mm未満に回復したが一部に炎症が残る場合は継続管理が重要」といった整理や、「4mm以上のポケットが一部残っても炎症がなければ“病状安定”としてSPTへ」といった考え方も示されています。つまり、理想は高く(浅く・出血なし)置きつつ、患者さんのリスクや残存所見に応じて**“補綴に進める現実的なゴール”を設定する**のがポイントです。
再評価で残る所見は、再SRPや歯周外科の検討材料
再評価で「深いポケットが残る」「出血が続く」場合は、単に“治りが悪い”ではなく、原因が取り切れていない・治りにくい条件があるサインかもしれません。たとえば、
歯肉縁下に歯石やバイオフィルムが残りやすい部位(奥歯の裏側など)
垂直性骨欠損(骨の減り方が局所的で深い)
根分岐部病変(奥歯の根の分かれ目)
強い咬合負担(噛む力の偏り、食いしばり等)
このような所見が残る場合、再SRP(もう一段丁寧に原因除去)を行うのか、部位によっては歯周外科を検討するのか、あるいは外科が難しい条件なら**管理強化(短い間隔での再評価+SPT)**で安定化を狙うのか、次の一手が変わります。再評価は「補綴に進むための関門」ではなく、最終補綴を長持ちさせるための作戦会議だと捉えると分かりやすいです。
補綴中も状態変化がないか確認する視点
補綴・修復(機能回復)が長期化する場合、開始時点で歯周が落ち着いていても、途中で清掃性が落ちたり、仮歯の形や咬み合わせの影響で歯ぐきが荒れたりすることがあります。だからこそ、補綴の工程中も「今の歯ぐきは安定しているか」をときどき確認し、必要なら仮歯の形態修正・清掃指導のやり直し・咬合調整を挟むのが安全です。
言い換えると、補綴は“作って終わり”ではなく、歯周状態の変化に合わせて微調整しながら完成度を上げる治療です。再評価で得た基準(PPD・BOP・動揺など)を、補綴期間中のチェックにも活用できると、最終補綴の安定につながります。
次は、患者さんが特に不安になりやすい「仮歯(テンポラリー)」「マージン」「かみ合わせ」を、補綴前にどう整えるべきかを具体的に整理します。
補綴前に整えておきたい「歯ぐき・仮歯・かみ合わせ」チェックポイント
補綴前は「歯周基本治療で炎症を落ち着かせる」だけでなく、仮歯(テンポラリー)の質やマージン(境目)の位置、**噛み合わせ(負担)**まで含めて整えることが、歯ぐきを荒らさずに最終補綴へつなげるコツです。歯周病学会の資料でも、歯周治療の流れの中で“口腔機能回復治療(補綴など)”へ進む際に、歯周の状態を評価しながら移行する考え方が整理されています。
ここでは患者さんが不安になりやすいポイントを、実際に起こりがちなトラブルとセットで解説します。
仮歯(テンポラリー)こそ歯周マネジメントの一部
「仮歯は仮だから多少合わなくても…」と思われがちですが、補綴前の歯ぐきにとっては、仮歯こそ大事な“環境”です。仮歯の段差や形が悪いと、短期間でもプラークが溜まりやすくなり、歯ぐきが腫れたり出血したりしやすくなります。
たとえば、こんなサインが出たら仮歯の調整ポイントかもしれません。
フロスが引っかかる/切れる(境目に段差がある可能性)
歯と歯の間の歯ぐきだけ腫れる(コンタクトや清掃性の問題)
歯ぐきが押されて白くなる・痛い(外形が強すぎる可能性)
仮歯の周りだけ出血が続く(清掃不良+適合不良の可能性)
仮歯は「見た目を保つ」だけでなく、歯ぐきの形を整える/清掃ができるか試す/噛み合わせの負担を調整するという役割があります。歯周患者さんに対する補綴の考え方をまとめた学会資料でも、プラークコントロール(清掃)を前提に治療を組み立てる重要性が繰り返し示されています。
つまり、最終補綴を長持ちさせるには「仮歯を“育てる”」視点で、通院ごとに微調整していくのが安全です。
深すぎるマージンは歯周トラブルの引き金になり得る
被せ物の境目(マージン)を歯ぐきの中に深く入れすぎると、仕上げ・研磨・清掃が難しくなり、炎症が長引く要因になり得ます。特に、歯ぐきには健康を保つための“幅”があり、そこを無理に侵すと腫れや出血が続きやすい、という考え方が補綴・歯周の分野で共有されています。
もちろん、むし歯の位置や審美性(見た目)、歯の残り方によっては、ある程度歯ぐきの中にマージンを設定せざるを得ないケースもあります。その場合に重要なのは、「深くする」こと自体よりも、
深い部位でも段差を作らない適合
歯ぐきを押しつぶさない外形(ふくらみ)
歯ブラシ・フロス・歯間ブラシが通る清掃性の設計
必要なら、歯ぐきの環境を整えるための術式選択(歯周治療や矯正的挺出などを含めた検討)
といった、“歯ぐきが荒れないための条件”を揃えることです。歯周治療後のマージン設定や形態が清掃性と関係する点も、補綴の文献で議論されています。
動揺や外傷性咬合が強いときは暫間固定・咬合調整を併用
歯周病では、炎症だけでなく噛む力の負担が治りを邪魔していることがあります。たとえば「特定の歯だけ噛むと響く」「朝起きると奥歯がだるい」「揺れて食べづらい」などがある場合、歯周基本治療を進めながら、
咬合調整(当たりの強い部分を整える)
暫間固定(揺れの強い歯を一時的に連結して負担を分散)
仮歯の噛み合わせ調整(“当たりすぎ”を避ける)
を組み合わせて、歯周組織が落ち着く環境を作る考え方があります。学会のガイドラインでも、歯周治療の流れの中で治療計画を修正しながら進めることが整理されており、状態に応じた併用が現実的です。
補綴前にここを丁寧にやっておくと、「仮歯の期間に歯ぐきが荒れる」「最終補綴を入れた途端に違和感が強い」といったトラブルを減らしやすくなります。
次は、患者さんが特に気になる 「治療期間・通院の考え方(補綴を急ぎたいときの現実的な進め方)」に進みます。
治療期間・通院の考え方(補綴を急ぎたいときの現実的な進め方)
補綴前の歯周基本治療は、「何回で終わる」と一律に決めにくい治療です。炎症の強さ、磨き残しの癖、喫煙や糖尿病などの全身状態、さらに噛み合わせの負担(食いしばり・外傷性咬合)によって、歯ぐきの落ち着き方が変わるからです。
大切なのは、補綴を急ぐほど“工程の質”を落とさないこと。歯周基本治療→再評価→必要なら追加治療→(歯周が安定した状態で)補綴、という流れを崩さずに、**「どこを短縮できて、どこは短縮しない方がいいか」**を患者さんと共有して進めます。次は、通院間隔がどう決まるのかを具体的に解説します。
通院間隔は「炎症の落ち方」と「清掃の定着」で決まる
補綴を急ぎたいときほど、「次はいつ来ればいいですか?」「何回で補綴に進めますか?」が気になりますよね。ただ、歯周基本治療の通院間隔はカレンダーで機械的に決めるものではなく、基本的に ①歯ぐきの炎症がどれだけ早く落ち着くか と ②セルフケアが安定してきたか の2つで決まります。
たとえば、毎回の診療で次のような点を確認します。
歯みがきの状態:磨き残しが減っているか(同じ場所がいつも赤い・腫れる、が続いていないか)
出血の変化:ブラッシングや検査で出血が減っているか
腫れ・違和感:歯ぐきのむくみが取れてきたか、痛みが出ていないか
仮歯の影響:仮歯の段差や形が清掃を邪魔していないか
生活背景:忙しくて磨けない日が続いていないか、喫煙や体調変化がないか
炎症の反応が良く、清掃が定着している方は次のステップへ進みやすい一方、出血が続く・磨き残しが多い・仮歯が汚れを溜めやすい形のまま、といった条件が残る場合は、間隔を詰めて環境を整えたほうが結果的に早く安定します。
補綴前の歯周基本治療は「急いで終わらせる」より、**“毎回のチェックでブレを減らし、安定したら一気に補綴へ進む”**ほうが、作り直しや再発を避けやすい進め方です。
補綴を急ぐほど“仮歯期間の質”が重要になる
「早く最終の被せ物にしたい」という希望がある場合でも、歯周基本治療を省略するより現実的なのは、**“仮歯の完成度を上げて、歯ぐきを荒らさない状態で補綴までつなぐ”**ことです。言い換えると、急ぐほど大切なのは「期間の短さ」ではなく、その期間をトラブルなく乗り切れるかです。
仮歯の期間に歯ぐきが腫れてしまう典型的な原因は、だいたい次の3つに集約されます。
適合(段差):境目に引っかかりがあるとプラークが停滞しやすい
外形(ふくらみ):歯ぐきを押しすぎたり、逆に隙間が大きくて汚れが溜まりやすかったりする
清掃性(磨きやすさ):フロスや歯間ブラシが通らない形だと、短期間でも炎症が出やすい
だからこそ、補綴を急ぐケースでは「仮歯を入れたら終わり」ではなく、仮歯の形を調整しながら歯ぐきを整える視点が欠かせません。たとえば、来院ごとに
歯ぐきの赤み・出血が出ている場所の確認
フロスがスムーズに通るか、歯間ブラシが使えるかのチェック
噛み合わせが強く当たっていないかの確認(当たりすぎは炎症を長引かせやすい)
を行い、必要ならその場で微調整します。こうした工程管理ができていると、最終補綴に移行した後も歯周状態が安定しやすく、「入れたのにまた腫れる」を避けやすくなります。
全身状態や生活習慣も、補綴前の安定に関わる
歯周病は、口の中だけで完結する病気ではありません。補綴前に歯ぐきを安定させるには、日々のセルフケアに加えて、炎症が長引きやすい背景も一緒に整理しておくことが大切です。
たとえば、次のような要素は歯ぐきの治り方に影響しやすいと考えられています。
喫煙:歯ぐきの反応が分かりにくく、治癒が遅れやすい
糖尿病などの全身状態:コントロール状況で炎症の落ち方が変わりやすい
睡眠不足・ストレス・食生活:セルフケアの質や免疫バランスに影響しやすい
食いしばり・歯ぎしり:噛む力の負担が歯周組織の安定を邪魔することがある
ここは「生活を完璧に変えてください」という話ではありません。大事なのは、補綴を長持ちさせるために、再発しやすい要因を先に“見える化”して、続けられる通院計画に落とし込むことです。無理のある頻度で詰め込むより、継続できるペースで確実に安定を積み上げた方が、結果的に早くゴールに近づきます。
次は、医院として「補綴前の歯周基本治療」でどこを大切にしているか(検査の共有、仮歯・清掃性・咬合まで含めた方針)を、患者さん目線で具体化していきます。
当院の「補綴前の歯周基本治療」で大切にしていること
当院では、「被せ物をきれいに作る」だけでなく、被せ物が入ったあとも歯ぐきが荒れにくい状態を作ることを重視しています。歯周基本治療はそのための土台であり、補綴治療の成否を左右する“準備期間”でもあります。
具体的には、次の3つを軸に進めます。
判定基準の見える化
歯周ポケット、出血、動揺などを検査し、どこが改善して、どこが課題として残っているのかを共有します。「いつ補綴に進めるのか」を“感覚”ではなく、検査結果をもとに判断できるようにします。仮歯・清掃性まで含めた歯周マネジメント
仮歯は“つなぎ”ではなく、歯ぐきを整えるための重要な装置です。段差やふくらみ、フロスの通り、歯間ブラシの入り方を確認し、必要があれば仮歯を調整して、最終補綴に移る前に歯ぐきの安定を作ります。噛み合わせ(負担)の整理
炎症だけでなく、噛む力が強い・偏っていると改善が鈍ることがあります。咬合調整や、必要に応じた暫間固定などを検討し、歯周組織にとって“治りやすい環境”を整えます。
補綴前の歯周基本治療は、遠回りに見えても「やり直しを減らすための近道」になりやすい工程です。関連する内容は、院内サイトの「歯周病治療」「被せ物・ブリッジ」「メインテナンス(SPT)」のページでも詳しくご案内しています。
よくある質問(歯周基本治療 補綴前)
補綴前の歯周基本治療は、症状が強くない方ほど「本当に必要?」と迷いやすい分野です。ここでは、来院時によくいただく質問を整理します。
Q. 痛みがないのに歯周治療を先にするのはなぜ?
歯周病は、痛みなどの自覚症状が少ないまま進行することがあるためです。腫れや出血が軽くても、歯周ポケットが深い部位が残っていると、補綴後に境目へプラークが停滞しやすく、歯ぐきがぶり返しやすくなります。
補綴前に炎症を落ち着かせておくと、型取りや境目の設定が安定し、清掃しやすい形に設計しやすくなります。結果として、長期的な再治療(腫れ・やり直し・再製作)のリスクを下げやすいのが理由です。
Q. いつになったら被せ物(最終補綴)に進めますか?
目安は、再評価で歯周ポケットが浅くなり、出血が落ち着いていることです。分かりやすく言うと「数字と所見で“治った方向に動いている”と確認できたら」補綴へ進みやすくなります。
ただし、もともとの骨の状態やポケットの深さ、根分岐部の有無、喫煙や全身状態などで“落ち着くまでの速度”は変わります。当院では、再評価の結果を見ながら、必要なら追加治療(再SRP、歯周外科の検討、仮歯・咬合の調整)を挟み、補綴を入れてから安定しやすいタイミングを一緒に決めていきます。
Q. 仮歯のままだと歯ぐきが腫れるのはなぜ?
仮歯の段差や外形、マージン位置が合わないと、短期間でもプラークがたまりやすくなり、歯肉炎が起きやすくなります。特に多いのは、
境目にわずかな段差がある
歯ぐきを押すようなふくらみがある
フロスや歯間ブラシが通りにくい清掃性の問題がある
といったケースです。
仮歯の腫れは「体質」ではなく、調整で改善できる要素が多いのが特徴です。気になる腫れや出血がある場合は、我慢せず早めにご相談ください。仮歯の調整は“補綴前の歯周管理”として、とても重要な工程です。
まとめ:歯周基本治療を補綴前に行うと、被せ物は長持ちしやすい
歯周基本治療を補綴前に行うことで、歯ぐきの炎症が落ち着き、補綴物の適合や清掃性を確保しやすくなります。治療は「基本治療→再評価→必要なら追加治療→補綴」という流れで進め、再評価で状態を確認してから補綴へ移行するのが基本です。
また、補綴を急ぎたい場合ほど、仮歯の適合・清掃性・噛み合わせを丁寧に整えることで、歯ぐきのトラブルを防ぎやすくなります。治療の順番に迷いがある方、仮歯期間の腫れが心配な方は、検査結果をもとに現状とゴールをすり合わせることが大切です。
気になる症状や「いつ補綴に進めるか」の不安がある場合は、当院の相談・カウンセリングで、検査結果を踏まえた治療計画をご提案します。